「―― そうじゃなくって…一琉が飲ませて…」
「…セ…ンパ…イ…」
腰掛けてる俺のひざに擦り寄ってきて、センパイは俺の首筋にキスしてくる。
「―― 早く…」
■ Chap 33 ： attempt(企て)
「研修…ですか？」
「そう」
桐羽センパイに呼ばれて事務所に行った俺は、突然の『研修』話に首を傾げてしまう。
「来週って、また…急な気が…」
「うん。そうだね」
桐羽センパイは何事もなかったように、手にした紙を眺めていつもみたいに笑っている。
「涼も行くから。よろしくね」
「え……」
「大丈夫。もう涼には話しておいたから。ここでの最後の仕事と思って、行ってきてくれないかなぁ？」
「―― はぁ…」
あまりに突然の話で、ちょっと気が引けてしまう。でも、上司の頼みじゃ断れないし……
俺は仕方なくその話を承諾して、研修へ参加する事にした。
「へぇー、いいじゃん。温泉つきの研修所だぜ？ラッキーじゃねーか」
「ラッキーって……」
休憩室で、捜査前の休憩を取りながらため息をつく俺。買ったばかりのコーヒーの缶をクルクル回しながら、考えてしまう。
研修に涼センパイが来るのは、気が引けるけれど半面ちょっと嬉しかったりする。
でも、その研修には有村先輩も来るらしく、それが俺には引っかかっていた。
―― 何かなぁ……きっと、２人だけ別の部屋、とかなったりすんだろーな……
今でさえ、有村先輩はしょっちゅう涼センパイを本店に呼びつけまくり。
今日だって、打ち合わせだか何だか知らないけど、午後から本店に行ってしまっているのだ。
それを思い出したら、何だかムカついてきて、思わず顔がムッとしてしまう。
清人はそんな俺の気も知らず、タバコをふかしてニヤリと笑う。
「いいじゃん、海辺の温泉。燃えるシチュエーションだよな〜」
「…燃えるシチュエーションってなんだよ。仕事に行くんだから、んなのあるわけ―― ……」
マジメな顔で言い返そうとした俺を、清人は下から覗き込んでくる。
「―― ふーん…？部屋で涼センパイが有村先輩に襲われてても、平気でいられるわけだ。有栖川クンは」
「襲われるって……んなの俺は知らねーし」
「あーそう。そうなんだぁ。俺なら無理やり連れ出して、自分のものにしちゃうけどねー」
「俺はお前と違うから。一緒にすんな」
「まーたまた。んな意地張らずに素直になれって。出先だったら、センパイだって……」
「あーもうヤメヤメ！俺とセンパイは、もうそういうのはないから。んなことは考えてないっ」
缶コーヒーをパキッと開けて、グビグビとそれを飲む。
―― もういいって決めただろ…センパイには関わらないって……
有村先輩と何があろうが、俺は涼センパイには近づかないと決めた。
センパイが俺を必要としてくれるまでは……
そうやって決めたからには、それを簡単に覆すわけにはいかない。
俺は自分に言い聞かせて、研修までの１週間を過ごした。
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「―― で、無理やり連れて来られた……」
げんなりした顔で、涼センパイはコキコキと肩をまわす。
研修所のロビーで、バックを下げた涼センパイに鉢合わせした。
俺は自分のバイクで来たから、センパイがどうやってきたか解らなかったんだけど…
「有村先輩て、何乗ってるんでしたっけ……」
「―― ベンツ…じゃねーの…あれ。オレは車にキョーミねぇから、わかんないけど」
どうやら、部屋から有村先輩のお迎え付だったらしい。
自分で頼んだわけはなく、行くからと押し切られて無理やり乗せて連れて来られたようで、ずいぶんとご機嫌がナナメだ。
にしても、ベンツでお迎えとは、さすが部長級は持ち物が違う。
なんだかもうすでに差をつけられた感じがして、何となくガッカリしてしまう俺。
「もうそろそろ、会場に移動しねぇとな…行こうぜ」
センパイは吸っていたタバコを灰皿へ押し付けると、小さくため息をついて前髪をうっとおしそうにかきあげた。
「―― 髪…伸びたね……」
最近じっと眺めてなかったせいで、そんなどうでもいいことも目に付いてしまう。
「…ああ、全然気にしてなかった……」
通路のカーペットに視線を落としたまま、センパイはボソッと答える。
そのまま、会場になっているホールに足を向けた。
会場に入るドアに席順と部屋割りが張り出されていた。
俺はそれを眺めて、フッと息をつく。
―― やっぱり………
俺とセンパイの席はすっごく離れてるけど、有村先輩と涼センパイはしっかり隣り合わせ。しかも２人で使うツインの部屋も同じ部屋。
―― 職権乱用って言うんだろ…こーいうの………
隣で一緒に紙を見上げていたセンパイは、ちらりとこっちを見上げる。
その目は、俺がこの紙を見てどう思ってるのか確認しようとしてる目だった。
俺と目が合うと一瞬諦めたように目を伏せて、それから荷物を持ち直す。
「…じゃな」
短く、それだけ言うと、センパイは自分の席の方へ行ってしまう。
席ではもう有村先輩が待ってて、涼センパイになにやら話しかけている。
―― ってか、コレを３日続けるのか………
ある意味、拷問に近いかもしれない。
自分の大事な人が、他の男と始終一緒にいるのを眺めていないといけないのは結構辛い。
―― 痛いなー結構……
解ってたことなのに、実際にその場に来てみるとかなり堪える。
俺はフルフルと頭を振ると、気を取り直して買ってあった缶コーヒーを開ける。それを飲みながら、やっぱり気になって涼センパイのほうをちらりと見てしまう。
センパイは無表情で荷物の中から研修の資料を取り出してた。
隣の有村先輩はまだなにやら話しているみたいだけど、センパイはそれを聞いているのか聞いてないのか、何も返さず自分のしたいことをしてるみたいだ。
そんな事をしているうちに研修は始まり、あっという間に１日が過ぎた。
研修が終わって部屋に移動するまで、結局センパイと一言も話を交わすことはなかった。
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夜、夕飯が終わって部屋に帰った俺は、ルームメイトに誘われた飲み会を断って独りで飲んでいた。
昼間のセンパイの様子とかを思い出しながら、何本かビールを開けたら、朝早かったのも手伝って知らないうちに眠ってしまった。
はっと目をさますともう真夜中で、いつのまにか戻ってきたルームメイトは隣のベッドで寝ていた。
―― …ちょっと飲みすぎたかも……
結構な量を短時間で飲んだせいか、頭がフラフラする。
「…ちょっと散歩でもしてくっか……」
酔い覚ましもかねて、俺は部屋から出る事にした。
どうやって歩いたのか解らないけど、フラフラと通路を歩いていたら、目の前に階段が見えた。
踊り場には窓があって、眺めもよさそうだ。
俺は階段を上がり、踊場の窓に腰掛けた。窓からは海が一望できて、少しだけ開いている隙間から心地良い風が入ってくる。
「はー……疲れた…」
研修が、というより、センパイと有村先輩を見ているのが疲れた、っていう感じだ。
自分がこんなに女々しい性格だって思ってなかったけど、これはかなりの女々しさかも知れない。
「あーあ……」
そんな風に考えていたら、なんだか空しくなってきてまた何か飲みたくなってきた。
仕方ないので、自販機コーナーでもう１本ビールを買い、さっきの場所に戻ると――
「…センパ…イ」
さっき俺が座ってたとこに、涼センパイが座っていた。
センパイは俺の姿に気づくと、ちょっと身体をこっちに向けた。
「―― どうしたの…？有村先輩は………？」
座ってる横に身体をもたせ掛けた俺を見上げて、センパイはフフっと笑った。
「アホみたいに飲ませたら、ぐーすか寝てるよ」
「……え？」
「うっとおしいだろ？こんなとこまで来て、バカみたいに迫られるの。だからしてやるって見せかけて、ガンガン飲ませて寝かせた」
はーっと息をついて、涼センパイはぽりぽりと頭をかく。
「そう……なんだ」
まさかの展開に、”関わらない”って決めたにも関わらずドキドキしている俺。
そのドキドキがばれないように、缶ビールをプシュッと開けて、勢い良く飲んだ。
「俺にもちょーだい」
涼センパイはちょっと俺に身体をよせて、ビールをくれとねだってきた。
―― もしかして……ちょっと酔っ払ってるのかな……
いつものセンパイなら、俺にこんな態度はしてこない。別れたあとは、なおさらだった。
なのに………
「ねー、ちょっとだけだからーー」
缶を持ってる俺の右手に自分の手を重ねて、そのまま飲もうとするセンパイ。仕方ないから、俺はされるままセンパイのいう事を聞いてる。
クピクピとおいしそうにビールを飲む顔がものすごく可愛くて、ドキドキがさらにレベルを上げる。
でも……
―― ダメなもんはダメだから！決めただろ…
センパイは今は俺のものじゃない。
有村先輩のものなのだ。
こんなおいしい状況でも、俺はセンパイに何もしちゃいけないんだ。必死に自分に言い聞かせて、俺は戻ってきたビールを飲もうとした。
「―― って、うわ！もうないし！」
「いいじゃん。もう1本買ってこいよ」
「 はぁ？！」
「俺も飲みたい。買ってきて」
久しぶりに、俺様口調で命令を受けた気がする。それに気をよくしてしまって、バカみたいにビールを買いに行ってしまう俺。
買って戻ってくると、センパイは窓に頭をくっつけて外を見ていた。
「はい。買ってきましたよ」
「ん」
持ってた１本をセンパイに渡すと、俺は窓の縁に腰をかけた。
「―― あれ、１本……？」
「２本買うお金がなくて。センパイ飲んで良いですよ」
「―― そうか……んじゃ、お前先に飲んでいーよ」
センパイはそう言って、俺に缶を返す。それから、また窓の外を眺める。
２本目を開けて飲み始めたら、センパイはこっちを向いて、俺を見上げた。
「―― 飲ませて………」
「 …え……？」
「それ……飲ませて………」
「あ、うん」
持ってた缶を渡そうとしたら、センパイはフルフルと頭を振った。
「―― そうじゃなくって………一琉が飲ませて………」
「…セ…ンパ…イ…」
腰掛けてる俺のひざに擦り寄ってきて、センパイは俺の首筋にキスしてくる。
「―― 早く…ぅ……」
たぶん、というか絶対に酔っ払っている気がする。
有村先輩にこれでもかって飲ませたのなら、自分も相当飲んでいるんだろうから、当たり前といえばそうなんだけど。
俺はビールを口に含むと、そのまま目の前にある涼センパイの唇に自分の唇を合わせた。
そのまま口移しでそれを飲ませると、センパイはそのまま、舌を絡ませてくる……
「涼―― センパ…イ」
こんな状況でキスされたら、後が我慢できなくなる。この辺でやめなきゃ――
ここまでしても、まだ俺の頭の中は『決め事』がしっかり幅を利かせてて、センパイへの欲情を必死に消そうとしてる。
なのに――
「ん…もっと…もっと欲しい…」
涼センパイの行動はそんな俺におかまいなしに、どんどんエスカレートしていく。
どうしたら良いのかわからないまま、俺は残ってたビールを全部開けると、そのまままたセンパイに――
…
「…ん…ぁ……ん…ふぅ…」
ビールを飲み干したセンパイはさっきよりももっと深く舌を絡ませてくる。
俺はもうさすがにマズイだろうと思い、センパイをちょっと引き剥がしてみる。
「…ちょ…ダメって……センパイ……部屋…帰らないと……」
俺がそういうと、センパイはじっとこっちを見上げた。
「―― オレ、酔っ払ってないから…」
「……は…い…？」
「有村寝かせたのは、一琉に逢いたかったから―― だから…」
「センパイ………」
「ダメって、解ってるけど、ダメなんだもん…も、これ以上、堪えられない…」
俺の首にしがみついて、センパイは肩にきゅっと顔を押し付けてくる。
何か恥ずかしいことを言いたい時は必ずしていたそのクセで、俺はセンパイが言いたいことがもう解った気がした。
「一琉にしてもらわないと…おかしくなりそう………」
そう言って、耳たぶを軽く噛んでくる。
一緒に部屋に居た時はそんな事ほとんどされなかったから、俺はそれだけでももう、どうにかなりそうだ。
しかもこんな場所で、その上に浴衣姿も手伝って、さらに煽られてしまう。
耳たぶをぺろりと舐めて、センパイはものすごく甘い声で俺に囁いてきた………
「―― …おねがい……して…っ…」
そんな風にお願いされたら、もう断れない。
俺ももう決まりごとなんてどうでもよくなって、センパイの腰に腕を回す。
久しぶりも手伝って、キスしただけでももう気持ちよくなってきてしまう。
「…あ…ぁ…い…ち…るぅ…」
淫らな音を立てながらキスを繰り返して、俺はセンパイの浴衣を上からも下からもはだけさせていく。
「…は……ぁ…あぅ……ん…や…ぁっ………」
そのまま首筋を舐めて、胸の赤い蕾に舌を這わす。
センパイはそれだけでもう身体をビクビクさせて、場所も忘れて声をあげてる………
「ふ…ぁん！はぅ…ううん…あはぁぁぁんっ……きもち…ぃ……」
そんなセンパイの声に欲情して、俺はそのままセンパイの熱くなった中心を一気に擦り上げた。
「あーーっ…あっあっあっ…！あはぁぁぁん！や…ぁぁん！ぃ…いよぉ…っ…！」
胸の蕾を交互に舌で愛撫しながら、あいている方を指で弄ってみた。
その反応で、中心がビクビクと震えて、先端から先走りがトロトロと零れ落ちてくる。
「だ…めぇ！いちるぅぅ……っ…オレっ…も……イキそ…う！あ…あ…あ…あ…あんっあんっ！イッ…ちゃう…っ！！」
センパイは身を捩じらせて、背中をのけぞらせる。中心からは真っ白な雫が迸って、床に零れた。
「も…おねが…い……ほし……ぃ…」
中指を噛んでセンパイは潤んだ目で俺を見上げた。俺はそんなセンパイにくすっと笑って、耳元で小さく囁く。
「ダメだよ―― ……まだダメ…」
センパイは縁に腰掛けさせたまま、俺は床にひざをつく。そしてそのまま、濡れてヒクヒクしているセンパイの中心を口に含んだ。
「あ…あ…あ…あ！！イヤぁ！だめぇ！いまイッたばっかなのに…はぁっ！！あぁぁー！」
舌で舐めあげながら喉の奥で扱くと、センパイの中心はまたすぐにぎゅうっと圧縮されて、熱い塊になっていく。
「や…や…やっ！い…いち…るぅぅっ！ダメ！はぁん！あぁぁん！…ふぁぁぁぁん！きもちいぃよ…ぉ！！またイッちゃ…うぅぅ！」
泣きそうに甘くてイヤらしいセンパイの声を聞くと、俺はもっと気持ちよくさせたくて、そのまま指を………
流れ出た先走りでなじませたソコはくちゅっと音を立て、簡単に俺の指を飲み込んでいく……
「ひ…ぁあああ！はぁぁぁん！はぁううっ…あんっあんっあんっ！あ…あ…ぁぁ…イ…イよぉっ…！」
指を増やしていくたびに、センパイは壊れそうな喘ぎ声をあげ、腰を捩らせる。
「あぁぁん！はぁぁぁ…っ…んぁぁ……ぁん！ダメ……おかしくなっちゃ…う…」
指を動かすたびに、ぐちゅぐちゅと卑猥な音をあげて、センパイのソコはきゅうっと俺の指を締め付ける。
喉もとの中心はものすごく熱くなって、今にも弾けそうにビクビクと動く………
「い…やぁぁぁ！も…ぅ…っ！あぁぁぁ…ああ…あっあっあぁぁん！はぁぁん！ひぁぅぅ…っ…い…いいっイイのぉっ…イクイクイク…っ！」
ビクンと震えて、センパイの中心はまた弾ける。
弾けた瞬間に奥まで指を差込み、ぐちゅぐちゅとかき混ぜるとセンパイは半分悲鳴のように声をあげ、ビクビクと身体を震わせた。
「ひぁぁぁ！ぁあぁぁぁぁーーッ！！イ…っちゃうぅぅぅ！奥…もっ…はぁぁぁん！イクぅぅぅっ！！」
「…涼……っ……」
久しぶりに、名前を呼んだ。
呼んだ、というよりも自然に口をついて出てしまった。
ぎゅっと抱きしめて、髪を撫でてキスすると、センパイは甘えた声で俺に言う。
「…好きって言って………」
そんな声でねだられたら、イヤとも言えず、俺はセンパイの耳たぶを甘噛みしながら小声で言ってみる。
「 …好きだよ…… 愛してる―― ………」
俺のその言葉に、センパイは満足げに笑顔を見せた。そのままきゅっと首にしがみつくと、ヤバいくらいに淫らな声でもう１つねだってきた。
「―― ……いちるので……して…」
ここは階段で、窓からは浜辺が見える。いまのこの状態だって、実は結構マズイ気もする。
通常の思考だったら、ちょっと考えてしまうけど今はそんな事言ってらんない……
「俺も………も…我慢できない…よ…」
このまましないなんて、絶対に無理。
それくらい自分の欲情が抑えられない。
センパイの顎を指ですくうと、そのまま唇を貪る様にキスする。ちゅくちゅくと舌が絡まる音が自分の体温を上げていく。
「―― は…あぁぁぁん！」
そのまま、一気にセンパイの中に自分を押し込んで、何も考えずに奥まで突き立てていく。
奥へグッと埋め込むたびに、センパイのそこはぎゅうっと俺の塊を締め付けてくる。それがあんまり気持ち良くって、思わず声が出てしまう。
「…ん……あ……すご…い……気持ち…ぃよ…」
「んん…っ…！オレもきもち…ぃ…い…あ…あ…あ…あん！はぁんっ…あっあっあ…あ…あ…ぁぁぁっ……」
動かすたびにずちゅずちゅと聞こえる音が、センパイの喘ぎ声と混じって、もう理性なんてどこかへ行ってしまう。
舌を絡めてキスをしながら、胸の蕾と弾けそうに膨らんだ中心を弄り始めると、センパイの身体はビクビクと震えた。
「…んあぁぁぁぁ！！イヤ…ぁっ！ダメ！だめえぇぇぇ！やっやっ！も、ソコだめぇ…っ！」
一番奥の感じる部分へ突き立てるのと、指で擦りあげるのを同時に激しくしたら……
「あ…ああぁぁぁ！あんあんあんっ！ひゃぁぁぁぁん…はぅぅっ…イイ…ッ…イッちゃう！イクっイクっ！」
泣きそうな声を上げて、身体を捩るセンパイ。声が途切れた瞬間にセンパイの中心は白濁を放つ。
「ん…んんんーっ！んはぁ！はぅ…んあぁぁぁあ…あ…あ……あっあっ…も、だめ…ダメぇ…イクぅぅっ…イッちゃうよ…っ…」
センパイは自分から俺の唇に吸い付いて、舌を絡ませてくる。俺もその舌の温度を感じながら、センパイの口の中を貪るように舐めていく。
「…ん…もぉっ…ダメ…はぁぁ…あ…あ…ん！い…ちるぅ…っ…すき！…好きっ…！」
「俺も…好きだよ―― …大好き―― ……」
今までの事や、今の２人の状態なんてすっかり忘れて、俺もセンパイももう、お互いの身体に夢中になってる。
今誰かが下の廊下を通ったら、きっと音が聞こえるんじゃないかと思うくらいに激しく突きあげる。
その度に、センパイは溶けそうに甘い声で喘いで身体を仰け反らせた。
「…おねが…ぃぃっ…も…も、イかせてぇ…っ…」
「…ん……イイ…よ……」
さっきまでしてたキスをまた繰り返して、俺はセンパイの一番奥へ繰り返し熱塊を押し込んでいく。
「は…あぁぁぁぁぁん！あふぅっ…ひ…あぁぁぁぁん！あ…あぁぁ…っ…イイッ…いいよぉ…っ…イクっイクぅぅ…っ…」
ガクガクと揺れるセンパイの身体。俺も、もうどうにかなりそう……
「はっ…くぅ…っ………ん…ぁあっ……も…イきそ…っ……」
「んん…っ…きてぇ…っ……！」
あまりの気持ちよさに堪えきれなくなって、ぐぃっと腰を引き下げるとセンパイは悲鳴のような声を上げた。
「ひ…ああぁっ！！ぁぁぁぁん！やっやっ…あ…あ…あ…あ…ああぁぁーーっ…イッ…イッちゃうぅぅーー！」
ビクビクと全身が波打った後、カクンと落ちるセンパイの身体。
俺はそんなセンパイを抱きとめると、その背中に腕を回す。
身体を繋げたまま、俺はセンパイの顔を覗き込んで、またその唇を塞いだ。
センパイもそんな俺を拒まずに、それに応えてくれる。
しばらくキスを続けた後、俺はセンパイを抱いたまま、小さくため息を漏らす。
―― この後…部屋に帰るんだよなぁ………
こんなに俺の身体に溺れてくれても、センパイは帰ったらきっと有村先輩にも抱かれるに違いない。
センパイが好きでそうしてるわけじゃないってわかってるのに、それがどうしようもなく嫌でたまらない。
―― だから………ダメだったんだけど…な……
自己嫌悪に陥って、俺はまたため息をつく。
センパイはそんな俺を見上げて、ちょっと悲しそうな顔を見せる。
「―― ごめんね………」
「…ん……？」
「…オレが…無理やり…誘っちゃったから……」
ため息をついたのを気にしたのか、涼センパイはちょっと首を傾けて俺の気持ちを確かめようとした。
「ホントは…そんな気なかった…って思ってるのかなって……」
センパイは俺の手にキスしながら、目を伏せる。俺は、そんなセンパイの身体を自分の方に向かせて額にキスした。
「…そんなこと―― 思ってないよ……そうじゃなくって……」
「じゃなくて……？」
そうじゃなくって、このあと、センパイが部屋に帰るのが嫌だ。
帰らないでと言いたいけど、そんなの言える訳ないし、言ったってどうしようもない。
そうやって、ヒトリでスパイラルしてる俺に、センパイは―― ……
「明日の夜も…会う……？」
「………え…？」
「あした……明日も同じように、夜中に逢って…って……」
「―― …俺は……いいけど…でも…いいの…？」
俺の問いかけに、センパイはコクリと頷く。
こんな事になるって思ってなかったけど、やっぱり清人が言った様に出先だから、センパイの気持ちも緩んでるのかも……
センパイが逢いたいって言うなら、それはそれでいいのかも……
ここでだけの事なら、それくらいは許されるかもしれない。
何となくそんな気分になってしまうのは、この状況がいつもの生活じゃないからか。
でも……
「…じゃ……明日もここで……同じくらいの時間に来れる…？」
「…うん……」
またコクリと頷くと、センパイは俺にチュっとキスする。
「―― じゃあ………戻るから―― ……」
するりと、繋いでいた手が離れる。
それをぎゅっとつかみたい気になってしまうけど、それをグッと我慢して階段を下りていくセンパイを見送った。
小さい背中が見えなくなると、俺は窓にコツンと頭をもたせ掛けて、深く息を吐く。
「―― はぁ……」
ふと目をあげると、月がずいぶん高いところまで登っていた。しばらく月を眺めたまま、冷たい窓ガラスに額を預ける。
―― っていうか……なぁ……
なんでこんなコソコソしなきゃならないのか、それもちょっと納得いかない気がする。
でも、それは納得いかないにしても、センパイが想ってくれてるのは俺だけって解って、ちょっとホッとしたりもして……。
「…ふぁ………」
いろいろ考えていたら、眠くなってきた。
俺はちょっとだるい身体を起こして、部屋に戻る事にする。
―― 明日かぁ……
さっきまでのセンパイの声や体温を思い出したら、思わず顔が緩んでしまう。
――海辺でするのもいいよなぁ……
って俺…何考えてんだろ。
自分の考えてる事が、清人の言ってた通りになってるのに気がついて、はっとする。
俺はコホンと咳払いをして、階段を下りた。
attempt
END