「ほいよ」
テーブルの上にポンと置かれた包み。
オシャレなグレーのラッピングに、真っ赤なリボン。
―― それって、もしかしなくても、…プレゼント？だよなぁ
でもセンパイがそんなもの買って来てくれるなんて思えない。
俺はしばらくだまったまま、その箱を眺めた。
■* X'mas‐SS Side-I ： Strawberry Special Ver.1
ポン！と小気味いい音を立てて、シャンパンの栓が抜けた。涼センパイはおもしろそうに隣でそれを眺めている。
「はい、グラス持って」
「ん」
センパイはテーブルの上のグラスを持つと、それを俺の前に差し出した。
グラスの中に注がれるシャンパンからあがる細かい泡。
「おおー。さすが最高級モノは違うな。めっちゃいい匂いがするぜ」
「まぁね。そりゃそうでしょ。値段も値段だったし」
ふんふんと頷いてグラスの中のシャンパンを眺めるセンパイ。俺はもう1つの空いたグラスに注ぐとビンを置いた。
「メリークリスマス」
グラスをふっと上げてセンパイの持っているグラスにキンとあてると、センパイはちょっと照れたように俺を見上げる。
「…メリークリスマス」
すっごく小さな声でボソッと返してくる所がセンパイらしい。俺はふふふと笑って、シャンパンを一口飲んだ。
「んー。おいしい。ねっセンパイ」
「…んだな。店で飲んでたヤツより美味いな」
そう言って、センパイはクピクピとシャンパンを飲み干す。それからコトンとグラスを置くと、準備してあるチキンに手を伸ばした。
「腹減った…店で全然食ってなかったから、もうペコペコ」
うめーと絶賛しながらチキンにかぶりつく姿を眺めて、俺は目をぱちくりさせる。
「あんなにいろいろ出たじゃないですか。何で食べなかったんですか？」
ちょっとずつシャンパンを飲みながらそう聞く俺に、センパイはしばらく何も言わなかった。でもちょっとしてから返事をした。
「ウチで食べたかったから、食わなかっただけ。だって、お前いろいろ作るっていってたじゃん。だからさ」
「いろいろって言っても、チキンとサラダだけだけど…じゃあ何かほかにも作ろうか？」
「いーよ。ケーキも食うし。シャンパンおかわり」
「はい」
空いたグラスにおかわりをついであげながら、俺は内心にんまりとしてしまう。
わざわざウチで食べるために店では何も食べなかったセンパイが可愛くて、思わずぎゅっとしてしまいたくなるキモチをグッと抑えてニコニコ笑ってみせる。
チキンとサラダを平らげたセンパイはグラスのシャンパンを全部あけると、おもむろに立ち上がった。
何も言わずにリビングを出て行くセンパイの背中を見送りながら、俺は残りのシャンパンを飲み干す。しばらくすると、センパイは手に何か包みをもって戻ってきた。
「ほいよ」
テーブルの上にポンと置かれた包み。
オシャレなグレーのラッピングに、真っ赤なリボン。
―― それって、もしかしなくても、…プレゼント？だよなぁ
でもセンパイがそんなもの買って来てくれるなんて思えない。俺はしばらくだまったまま、その箱を眺めた。
「開けてみて」
センパイは俺のとなりにちょこんと座ると、ねーねーという目で見上げてくる。
俺は言われるまま、その包みを解いた。
「―― これ……」
それは俺のお気に入りのフレグランスだった。
「お前、よくこれつけてるじゃん。だから気に入ってるのかなーって思ってさ」
えへへ、と笑う涼センパイ。
でもこのフレグランス、最近は売り切れてる店が多くてなかなか買えない。センパイはこういうものに興味がないから、探して買うのはかなり大変だったんじゃ……
「わざわざ、探してくれたの？」
「探したっていっても、2〜3軒回っただけだぜ？」
そんなに大変じゃなかったから、とセンパイはフレグランスのビンを手に取る。
「これ、けっこういい香りするじゃん？なんか美味しそうな匂い？っていうか」
その表現が面白くて、ちょっと笑えてしまう。まぁ、フルーティー系に紅茶の香りがブレンドしてあるものだから、わからなくはないけど。
シュッと自分の手首に掛けてみているセンパイを眺めて、俺は何てお礼を言おうか考える。
だけど、やっぱりありきたりな言葉しか見つからなくて、結局口から出たのは……
「…ありがと…すごい嬉しい…」
もっと感激してるって気持ちを見せたいんだけど、何て言ったらいいか解らない。せっかくセンパイがわざわざ俺の為にショップを回ってまで買ってきてくれたプレゼントなのに……
そうやってうだうだ考えている俺を眺めてセンパイはニマリと笑った。
「やった。すげービックリしただろ。くくくく」
俺の前でおなかを抱えて笑う涼センパイ。何だ？この反応でオッケーなのか？
もっと喜べと文句を言うかと思いきや、かなり満足げな表情を見せるセンパイに俺は首を傾げるしかない。
「え…だって、センパイがこんなもの買ってくれるって思ってなかったから、ビックリしますよ。そりゃ」
「だろー？だから一生懸命探したんだよ。お前がどんな顔するか楽しみで」
また笑い出すセンパイに俺はもう何も言えなかった。なんだか、喜んでいいのかどうか解らなくなってきた。
でも。
「一琉にはいつもいろいろしてもらってるから。なんかご褒美でもあげたほうがいっかな、って思ってさ」
センパイのそんな言葉に、おもわず緩む口元。今日はなんだかちょっぴり素直？な感じがする。
これはいい感じ…この状態でいければ、今日はうまく行くかも……
「ありがとうございます。宝物にします」
フレグランスのビンを箱に詰め直す俺をセンパイはニッコリ笑って見る。それからかなりご満悦な様子でシャンパンをグラスに注いだ。
「ケーキ食おうぜ。アヤのオススメの何とかって店の。うまいんだってな」
「ええ、お店の常連さんはみんな知ってましたよ。なんでも今大人気のパティシェのお店だそうで。TVにも出てるらしいですよ」
「ふーん」
キッチンから箱ごと持ってきてテーブルの上に置くと、センパイはどれ、と言ってそのフタをあける。
「おおーすげぇ！イチゴだらけじゃん！」
「ストロベリースペシャルって名前ついてましたから。ホントにスペシャルですね」
ホールの上一面にびっしり敷き詰められたイチゴ。その隙間から、生クリームが装飾のように飾られてるケーキを見て俺もセンパイも目を大きくする。
「食ってみようぜ。な、切って切って」
「はいはい。ちょっと待っててください。今ナイフもってきますから」
俺はキッチンでナイフをちょっとだけあっためて、またリビングに戻る。センパイはその間ホールの上のイチゴの数を数えてみたりしていた。
「間にもはさまってるのかな」
ナイフを入れながらそう言う俺の顔を見上げて、センパイは頷いて答える。
「そりゃそうじゃね？だって”スペシャル”っつーくらいなんだからよ」
「ですよね」
予想通り、上下に分かれたスポンジの間にもびっしりとイチゴが詰め込まれていた。しかも、サンドしてあるトコロにはストロベリーのクリームが使われている。
「うっまそー。食っていい？」
「うん。はい、これ」
ケーキ皿にのせた１切れを、涼センパイはさっそくパクパク食べ始める。普段はあんまり甘いものは食べないけど、これはOKらしい。
「めっちゃイチゴ味。名前そのまんまだな」
自分の分も取り分けて、俺もストロベリースペシャルをいただいてみる。ふむ、確かに。”イチゴ味”だ。
取り分けた分を食べ終わると、センパイはもう１切れ食べようとした。俺はそんなセンパイにちょっと提案してみた。
「あ、ちょっと待った。」
「…あ？」
切り分けた中の1つを皿に移すと、俺はそれをフォークでサクッと切った。
「食べさせてあげる。はい」
「あー？いらねーって。自分で食う！」
「いいじゃん。せっかくなんだし。ほら」
「…もー…しょうがねぇな…」
出されたフォークの上のイチゴをパクンと口に入れる涼センパイ。その仕草が可愛くて、もっと見たくなる俺。
「はい次」
「うー」
差し出されたフォークをしばらく眺めて、センパイはまたぱくりとそれを食べる。何度かそれを繰り返して、俺は次の作戦に出た。
「じゃイチゴ。はい、あーん」
指で１つイチゴをつまむと、それをセンパイの口の前に持っていく。
「ちょっと待て。なんか怪しい方向に行ってるよーな気がすんだけど」
「なーに言ってるんですか。気のせいですって。ほら、おいしいよ？」
うん…と納得しない顔をしながらも、センパイはそれを口に入れる。もぐもぐとイチゴを味わっているセンパイを観察しながら、俺は続きを始めた。
「はい」
指先にクリームをちょっとだけ取って、鼻先に持っていってみた。さすがにこれは怒るかも知れないと思ったけど、勢いでちょっと試してみる。
そしたら……
「……もー…やると思った……」
そういいながらセンパイは、俺の指をぱくりと咥えた。
ちゅぷっと音をさせて、クリームを舐める涼センパイ。そのシチュエーションが妙にいやらしく感じて、ちょっとドキドキしてしまう。
「もっといる？」
「くれるなら、食べさせて」
なんだか意味深な言い方だなぁと思いながら、俺はクリームをもう一回すくった。その指に、涼センパイはまたパクンと食いついてくる。
でも、今度の涼センパイの反応はさっきとは違った。
ちゅぷちゅぷと音を立てながら、センパイは俺の指を舐める。クリームはすっかりきれいになくなっても、センパイはそれを続けた。
「…ん…」
ちゅっと指先を吸われて、ビクンと反応する俺の身体。涼センパイはそんな俺の状態を確認して、こう聞いてきた。
「ケーキじゃないものも…食べてみる…？」
―― ダメだ…もーガマンできない…っ
自分から仕掛けといて情けないなぁとか思いつつ、俺は素直に返事をしてしまう。
「食べたいよ…めちゃくちゃ…」
俺の返事にふふっと笑って、キスしてくる涼センパイ。きゅっと抱きついてきて、小声で耳元で囁いてくる。
「ここじゃヤダ…部屋でしよ…？」
そんなお願いに、俺はもう心臓が壊れそう。いままでずっとソファでいちゃいちゃしてるだけだったから、そんなこと考えてなかった。昨日だって、勢いでしちゃったからその辺の机の上だったし。
でも、こんな可愛くお願いされたら聞かないわけにもいかない。俺はセンパイをお姫様抱っこして、自分の部屋へ連れて行く。
「…ぁ…一・琉…や…だ…ちょっと待っ…て」
腕からベッドにセンパイの身体が移るかどうかの瞬間に、俺はそのシャツを脱がしに掛かる。キスで唇を塞いで胸の突起をクリッと撫でると、センパイは溶ける様な声を出す。
「ふ…ぁん！んん…ぅ・きもち…ぃ…」
「ココ…？」
「ん！ぁ！ソコ…っ…」
突起の先をきゅきゅっと擦ると、センパイは蜂蜜みたいな声をあげる。そこを責めながら首筋にキスして俺はセンパイの着ているものをゆっくり脱がしていく。
「…は…ぁん」
「すご…濡れてるよ…？」
「…んん…っ…ヤダ…っ…」
溢れた蜜で濡れている先をイジワルするみたいにくすぐると、センパイは半分泣きそうな声で俺に言った。
「…ちゃんと…気持ちよく…して…」
「ん…解ってる…よ」
ふふっと笑うと、いつもよりちょっと乱暴にそこを扱いてみる。これだけ反応してたらきっとすぐイッちゃうかも。
そう思っていたら、予想通りセンパイはすぐに達したようだった。
「あ！ん！やぁ…っっ！！ダメ！も・イク！あ・はぁっ！んんーーっ！」
ビクビク震える身体をきゅっと抱いて、キスをする。首筋から胸へ、そこからまた腰のほうへつつっと舌を這わせるとセンパイはピクンと反応した。
まださっきの余韻でトロトロに濡れている中心を俺はペロリと舐める。
「あ……ダメ…んなコトしちゃ…っ…や…！あぁぁ！」
「カワイイ…もうこんななってる…」
実は、今までしてもらうばっかりで俺はセンパイにしてあげた事がなかった。イッたばっかりなのにキスですぐに反応するソコを飲み込むと、舌の上でヒクンと波打つのが解る。
「あ…ぅ…」
枕にぎゅっと顔を押し付けて、センパイは零れる声を押し殺した。どれくらい気持ちいいのか、それを見れば聞かなくっても解る。
「あ・あ・あぁっ…ダメ…ぇ…またイッちゃ…うよ…ぉ…」
泣きそうな声を出して、俺を見るセンパイ。舌でチロチロと先を舐めると、蜜がトロリと溢れてくる。
「ガマンできない…？」
「ん…もう・ダメ…っ…できな…い…おねが…い…」
はぁっと吐息を零して、センパイは指を噛みながら目を伏せる。その仕草があんまり色っぽくって、俺の心拍数は普段の倍くらいに跳ね上がった。
音をさせながら奥まで中心を含んで一気に吸い上げると、センパイの声のトーンがさっきよりも高くなる。
「んっ…あぁぁ…っ…ふぁ…ぁ…も・イイっ…！ダメ…っ…またイ…くぅ…っ！」
「…ん…」
ピクンピクンと波打つ中心に軽くキスすると、そのまま覆いかぶさるように細い身体を抱きしめる。背中に腕を回してそっと抱き起こすとセンパイは潤んだ目で俺を見上げてきた。
「……してあげる…」
チロチロと舌先で首筋を舐めて、小さな声で囁いてくるセンパイ。息が切れそうなくらいに続いた長いキスの後、ゆっくり俺の膝の間に頭を埋めた。
「…ん・あ…っ」
中心を含まれた瞬間、その気持ちよさに思わず声が出てしまった。
いつもはちょっとづつ深くなっていくソコへのキスなのに今日はちょっと違う。深く差し込まれた喉の奥できつく吸い上げられて、一気にイッてしまいそう…
「ちょ…待って…セ…ンパイ…俺イっちゃい…そう」
背筋がビクリと震えて、もうガマンできそうにない。そう思っていたら――
「ふふ…気持ちいい？」
急に緩くなるセンパイの行為に、身体の力が一気に抜けていく。気持ちいいトコロを微妙に外して舐めてくるセンパイの舌がもどかしくてたまらなくなる。
「…涼セ…ンパイ…も・俺っ…」
キスを続けるセンパイの耳朶を指で撫でながら、俺ははぁっと息を零す。またちょっとずつ深くなっていくキスに耐えられなくて思わず口にしたのは…
「も、いい…から…っ…挿れさせ…てっ…」
俺のそんな言葉に、顔を上げるセンパイ。クスッと笑うその顔はまるで小悪魔だ。でもめっちゃ可愛い。
「…したい…？」
「したいよ…解ってるクセに…」
「…ふふ…」
気持ちを読んでるみたいにきゅっと俺に抱きついてくる。もうすぐにでもしたいのに、センパイはなかなか次に進ませてくれない。
「キスして…」
「…ん…」
唇を軽く合わせて、舌先を絡ませる。センパイはそんなキスを楽しみながら、俺の首に腕をまわした。
「…いい…よ…」
そう言った後、合図みたいに深くなるキス。そのまま、俺はセンパイの身体を自分のモノにしていく…
「……ぁ…ああ…ん…っ…！やっ…深い…よ」
「センパイが焦らすから…加減できそうにないからね？」
「やだ…っ…い…ちる…あぁぁあっ！」
するりと俺を受け入れてきゅうっと中で俺を締め付けてくるセンパイ。火照ってる身体よりももっと熱くなってる内側に沿わせて、俺は塊を上下させた。
ちょっとずつ行き来する勢いを早めると、センパイの瞳がどんどん潤んでいく。
「こっちも？欲しい…？」
奥まで深く突き上げながら、センパイの中心を右手で責める。先からトロトロと零れる蜜が立てる音と、後ろで出入りするたびに聞こえる音で感覚が麻痺しそう…
「は・ぁあああん！や…ぁ…っ…あっあっあっ・…すご…イイっ…」
俺の肩に掴まって、髪を揺らして声をあげる涼センパイ。塊が奥に当たるたびに、溶けそうな声を零して背中をしならせる。
「あ・あ・あっ！も・ダメ…っ…や…あっ…も…う・イきそ…う…ふぁ…ぁ…」
そう言って俺にキスすると、センパイは自分から腰を揺らして俺を奥まで飲み込んでいく。俺はそんなセンパイを見てるだけでクラクラしてきて、頭が真っ白になってしまった。
「…涼…っ…すご…気持ちいい…よ…」
名前を呼んで抱き寄せて、目の前の赤い膨らみに舌を這わせた。指で中心の一番イイ所を扱きながら奥まで突くと、センパイは甘えた声で俺の名前を呼び返してきた。
「い…ちる…ぅ…っ……す…き…っ…」
大好き…と小さく囁かれる声。そんなコト言われたら、俺だって言い返さずには居られなかった。
「俺も……好きだよ…すごい好き…」
首筋を撫でてキスすると、舌を絡ませてくる。トロリと舌先から雫が伝うのもおかまいなしにキスを続けて、行為に溺れる。
しばらく続いた波はだんだん高さを増してきて、もう逃げ場がなくなっていく…
「だ…め…俺もう…イきそ…う」
ちょっとでも締め付けられたら、きっと一気にイきそうなくらいに昂ぶってる塊を奥まで深く挿し込んだ。センパイももう限界みたいで、背中に腕をまわしてぎゅうっと抱きついてくる。
「あ・あぁぁぁん…っ…イ・イの…も…イッちゃ…う……！イ…く…」
奥に当たってるまま腰をきゅきゅきゅっと突きあげたら、センパイは角砂糖みたいに腕の中で溶けた。俺もそのまま、センパイのナカに自分の欲望を吐き出して落ちていく。
「…好きって…言って…」
きゅうっと抱きついてきて、子猫みたいな声で甘える涼センパイ。華奢な身体を抱き返すと、俺はリクエストどおりに返事を返す。
「好きだよ…めちゃめちゃ好き―― …もっと…？」
「ん……もっと…言って……」
キスしながら囁いてくるセンパイの髪を撫でながら、俺は何度も好きだと繰り返した。
しばらく緩々とじゃれ合った後、俺はハッと気がついてベッドサイドの小引き出しから小さな箱を取り出した。
「なに…？」
センパイはシーツに包まったまま、俺のする事をじっと眺める。俺はその小さな箱を開けて、中身をセンパイに見せてあげた。
「このトップ、センパイすっごく欲しがってたでしょ？だから頑張って買っちゃった」
と言って俺がセンパイに渡したもの。それは１点もののシルバーのペンダントトップだ。予約でしか買えないしおまけに売ってるところがほとんどなくて、手に入れるのにずいぶんと苦労した。けど、センパイの為だから仕方ない。
寝転んだまま、センパイはそれを受け取ると嬉しそうに笑う。
「ありがと。大事にする。でも…ね」
シーツから両手を出して、俺のほうへ腕を伸ばしてくるセンパイ。俺はその要求にこたえて身体をかがめた。
首筋にするりとまわる指。センパイは頬にキスしてから、こう言った。
「一琉が、こうやって一緒にいてくれる事が一番のプレゼントだから…」
それを聞いてまた倍増する心拍音。んなに可愛い事言われたら、また襲いたくなっちゃうってのに…
「だから…今夜はずっとこうしてて……」
殺し文句っていうのは、こういうのを言うんだと俺は今日始めて解った気がする。とろんとした目で俺を見上げるセンパイの耳朶を噛んでこう返した。
「いいけど…大人しくしてられるか解らないよ…？」
「…ん…それでも…いいよ…」
そこからは会話はなくて、聞こえるのはお互いの吐息だけ。
このままクリスマスイブが一生続けばいいのに、とかバカな事を考えながら、俺はシーツにもぐりこんだ。
Strawberry Special Ver.1
END
